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2013年 06月 10日

紙焼き機という機械

デザイン作業がまだデジタルになる前の時代、
印刷用の版下や、デザインのラフスケッチをつくる際に必須だったのが、
紙焼き機(正確にはトレスコープ)という機械でした。
写真のネガフィルムを印画紙に焼き付ける引き伸ばし機と、原理的には同じ物なのですが、
主に2つの用途で使っていました。
一つは、写真やタイトル文字などを拡大してトレスし、
色を塗ったりしてラフスケッチやデザインカンプのための素材をつくること。
そしてもう一つが、「紙焼き」を作成する事です。
「紙焼き」とは、写植文字やロゴタイプ、作成した版下などを、
印画紙に拡大縮小して焼き付けた物です。
グレー諧調の無い白黒写真のような物で、それらを印刷用の版下に貼付けていくのが、
デザイナーのアシスタントの主な作業でした。

写真を現像するのと同じ原理ですので、作業は暗室の中で行います。
冬はいいのですが、夏場は照明の熱が狭い暗室内にこもって、
それはもう暑い事この上ない作業でした。
現像液の温度によっても、仕上がりが変わるため、
気温の低い冬はドライヤーや、手のひらに挟んで温めたりして、
少しでも現像時間が短くなるよう工夫しました。

デジタルデータでの制作が当たり前になった現在では、
「複製」はとても容易に、そして劣化の無い100%同じコピーをつくることができます。
前述の紙焼きでも、複製すれば劣化するのが当然でした。
文字の細かな隙間がつぶれてしまったり、逆に細い線がとんでかすれてしまったりするのです。
逆にわざとピントを外して焼き付け、ぼかしの掛かった効果をつくったりもしました。

デジタル制作になる以前でも、コピー機の発達によって、
紙焼き機の必要性は少なくなっていきました。
コピー機の精度も上がって鮮明な画質が可能になり、
拡大縮小コピーが1%刻みでできるようになったり、
(恐ろしい事にそれまでのコピー機は、4段階ぐらいしか%指定ができなかったのです)
カラーコピーが安価でできるようになったりと、
暗室にこもる作業は減っていきました。

やがてMACが登場し、IllustratorとPhotoshopを駆使するDTPの時代が始まります。
文字や画像を拡大縮小するという「技術」は、
パソコンとソフトがあれば誰にでもできる「操作」に置き換わりました。

この記事に書くにあたって、「紙焼き機」や「トレスコープ」などで
検索をかけてみたのですが、該当する結果のどれもが数年前から十年以上前の記事であり、
時の流れを実感することとなりました。
以下は「トレスコープ」で画像検索をかけた結果の画面です。
半分以上が求める画像ではないという結果が、
既に失われた技術である事を物語っているのだと思います。

Moriuchi/designer

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ブルックスタジオは「Forward to 1985 energy life」に賛同いたします。
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by brookstudio-f | 2013-06-10 18:03 | Kobayashi/designer | Comments(0)


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